特別な夏至の日、茅の輪くぐり

―陽のめぐりと、静けさにふれる日―

6月21日。
陽のエネルギーが一年でいちばん満ちる日、夏至。

この日、私は神社へ足を運び、茅の輪(ちのわ)くぐりを体験してきました。

今年の夏至は、どうやら「特別な日」とも言われているらしく。
ネットやSNSでも、“今年の夏至は日本にとって特別”という声がちらほら。
そういう流れもあってか、神社の境内にはたくさんの人が集まっていました。

時間を合わせて参拝しに来ている方も多かったようで、
神主さんまでもが、時計を見ながら茅の輪の列に並んでいらして、
どこか静かであたたかな空気が流れていました。


茅の輪をくぐる、という祈りのかたち

境内の中央に、青々とした大きな輪。
これが「茅の輪(ちのわ)」です。
ススキや茅(ちがや)を束ねて作られたこの輪は、夏越の祓(なごしのはらえ)という古来の神事に由来するもので、
上半期の「けがれ」や「つかれ」を祓い、身も心もすっきりと新たな下半期を迎えるための儀式です。

輪の前で一礼し、「左 → 右 → 左」と8の字を描くようにくぐっていくと、
自然と呼吸が整ってきて、
たったそれだけの動きなのに、気持ちがすーっと軽くなっていくのを感じました。

まるで、体のなかの不要なものを風がさらってくれるような、そんな感覚でした。


太陽と風と、からだの声

夏至は、太陽の力がもっとも強くなるとき。
けれど同時に、ここを境にまた、少しずつ陰の気配が戻ってくる始まりでもあります。

まさに「陽から陰への折り返し地点」。
強く輝く太陽の下で、たくさんの人が太陽に向かって手を合わせている姿がとても印象的でした。

私たちも、少しだけ真似をしてみて、小さく感謝の祈りを。

汗ばむ陽気のなかでしたが、神社の木陰に立つと風が心地よく、
騒がしさから離れた場所で、「いま、ここ」に自分が立っていることを思い出すような、そんな時間でした。

神社という場所には、目には見えないけれど、
どこか大きな“ゆるし”や“くつろぎ”のようなものが漂っているように思います。

何かを願うというよりも、
「こうありたいな」と、静かに自分の輪郭をなぞるような、そんなひととき。


陰から陽へ、そしてまた陰へ

これからまた、少しずつ昼が短くなり、
季節は静かに、でも確実に移ろっていきます。

自然はいつだって急がず、無理をせず、淡々とめぐっている。
そのリズムに、ほんの少し自分の呼吸を合わせてみるだけで、
肩の力がふっと抜けて、気持ちが軽くなることがあります。

今回の茅の輪くぐりは、まさにそういう時間でした。

がんばるばかりじゃなく、
立ち止まったり、緩めたり、やわらげたり。
そういう時間も、暮らしの中でちゃんと大切にしていいんだなぁ、と
あらためて感じさせてもらった一日でした。


今日という節目を、ひとつの灯りに

もし、ちょっと疲れてしまった日があったとしても。
もし、心が定まらないまま歩いているように感じていたとしても。

そんなときは、空を見上げて、そよぐ風に耳を澄ませてみてください。

季節の節目に、神社という場所で静かに手を合わせるだけで、
「いまの自分」に優しく戻ってこられるような気がします。

夏至という一年の節目に、
心の奥深くにふわっと明かりが灯るような時間が持てたこと。
それが、この日のいちばんの贈りものだったのかもしれません。

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